住宅ローンがある場合の離婚 売却をオススメする理由
離婚時に一番多い家のこと。
「ローンは夫が払い、妻と子供が無償で家に住む」
今回のブログはこのパターンをやめといた方がいい理由と、家を売却するススメをお話してみようかと。
実際に妻と子が無償で住むパターンはトラブルが多いので。
住宅ローンがある場合の離婚 売却をオススメする理由
離婚した家の競売の話
離婚した夫婦の家が競売に出ることがある。
競売の調査報告書を見ると、所有者は元夫で、元妻と子供らが「使用貸借(無償で賃貸している)」して占有している状態だとわかる。
競売で落札して、占有者(元妻と子供ら)の立ち退き交渉を進めるのだけど、「私達はどこに住めばいいのよ!人でなし!」と子供を前面に押し出して言われちゃったりする。
心は痛むが、もうあなたたちの家ではないのをご理解して頂くしかない。
なお、競売で占有者がいる場合、落札者は立ち退き料を払うなどして対処するのが一般的。
ちなみに、競売の情報は誰でも閲覧することがわかる。裁判所で閲覧するのはもちろん、インターネットでも情報が掲載される。
離婚時に妻と子に住まわせ、ローンは夫が払い続けるメリットとデメリット
メリット
子供のことを考えるならば、生活環境が変わらないことである。
学区や習い事、友達関係、住み慣れた家だということの安心感。
居住費がかからないという経済的恩恵。
デメリット
・所有者の夫に勝手に家を売られる。
・ローンの支払いが滞り競売にかけられる。
・連帯保証人になっている場合は夫が支払わない場合、妻にローン請求がくる。
※保証人の場合、夫が払わない時に妻に請求がきても妻は債権者に「まずは夫に払ってもらって下さい」と主張出来る(催告の抗弁という)が、連帯保証人である場合は主張することが出来ない。債権者からすると請求としての地位は同等なのである。
ローンを払っている夫の心情
以下は夫の心をセリフにしてみました。
「子供のことを思ってとはいえ、住んでいない家のローンを払い、養育費も払い、自分の居住費も払って、自分の生活費もかかる…。正直金なんか全然ねえよ」
「彼女出来たから再婚したいんだよなぁ。あの家売っちゃうか」
「子供にも会わせてくんないし、ローン払ってるのバカらしくなってきた」
「40年ローンで組んで、年金貰う歳になっちまってもまだローンあってもう払えねえよ」
「給与下がってローンなんか払えなくなったよ」
「住んでもないのにローンも固定資産税も払ってんのバカらしいわ」
「体壊しちゃって働けなくなっちゃったよ」
と、夫がローンを払い続けるには、夫の誠実さと責任感と健康な体と安定した所得と、別れたとはいえ友好的な元夫婦関係もしくは親子関係がないと、モチベーションを保てない。
住宅ローンを組む場合、収入によるローンの締める割合は20%前後が平均的で、家を出た夫にも居住費がかかるので、ローンを払い続ける夫にトラブルが多くなるのも重い支払額からである。
だから公正証書や協議書で強制力がある形(差押え等)で対処をするのだが、差押えしたくとも、例えば口座に残金がない、会社を辞めた、病気で働けなくなったなど元夫に収入がなければそれも出来ないわけで。
無償で住み続けるにはとても不安定な地盤に立っているのです。
家はローン契約と所有権と税金が複雑に絡み合う
離婚の家のことで何が面倒かというと、所有権とローン契約と連帯保証人や連帯債務者、住宅の持ち分割合などが複雑に絡み合うから。
さらに税金では不動産取得税、贈与税、所得税など も考えなくてはいけない。
例えば、夫婦で連帯債務者で、夫が養育費の代わりにローンの全てを払うと協議で決まったとしても、妻は債務者のままであり返済が滞ったら請求されるのは変わらない。
ローン支払いは夫、家は妻のものとして協議が決まったとしても、勝手に所有権を移すことも出来ない。
思い出してみよう。その家は夫の所得(もしくは妻の収入も合算して)で、本人が住む前提で所有権は夫、もしくは夫と妻共有でローン申請したものであったことを。
その契約から逸れることは契約違反なのだ。
離婚協議の内容は金融機関には全く関係のないことなのです。
家はローンを完済するまで自分の物ではない。抵当権がついている限り金融機関のものと思った方がいい。
売却のタイミング
色んなパターンがありすぎて、答えを簡単に出すことは出来ないが、まずはローンをどうするかである。
売却することを決めたならば、離婚後にするのがいい。離婚前に売却してその現金を財産分与すると贈与税になるが、離婚後だと財産分与には税金がかからない。
ローン残債があるならば、売る前に金融機関へ「家を売りたい。残債は売却代金で支払います」と伝えよう。抵当権がついているので、抹消する必要があるからだ。
売却は不動産業者に頼んで売買仲介の形にすると一番高く売れる。買取は急いで売りたい時や、残債が少ない場合に考慮するといい。
抵当権がついている不動産売買の実務の流れ
売主買主双方が売買契約を結ぶ→
契約書には「抵当権等の担保権及び賃貸借権等の用益権その他買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を削除する」という文言がある→
所有権移転(物件引き渡し)の実行日に合わせて、買主側から売主側への着金が確認されると、抵当権の抹消手続きと所有権移転の手続きを同時に司法書士が行う→
着金から金融機関は残債を回収するという流れに。
どうしても今の家に住み続けたいならば
・妻に所得があって住宅ローンを組めるならば、夫から家を買い取り、新たにローンを組む。所有権も移るし、連帯保証人も解消される。
・妻が専業主婦だったりパート収入だった場合は、ローンを組むことも出来ないのでローンを組めるような所得になったら元夫から家を買い取ることを考える。
・実家から援助してもらえる場合は援助額も含めて、夫から買い取ることを考える。
オーバーローンで売りたくても売れない場合
・賃貸に出して経費込みで返済額よりプラスになるならば考えてみよう。ただし、居住用の住宅ローンなのでこれも契約違反になる。勝手にやってバレると一括返済を請求されるのでやむを得ない事情(離婚)であることを伝え、許可が下りるかは金融機関しだい。許可が下りないならば、通常の融資の借り換えが出来るか模索してみる。
・任意売却をすると、売却代金が残債分足りなくても抵当権を抹消出来る。残った残債は違うローンを組んで返済していく。
任意売却とは
本来なら残債がなくならないと抵当権を抹消してくれないが、金融機関で任意売却を了承されると残債が残ったとしても抵当権を抹消してくれる売却のこと。
だからといって、その残った残債がゼロになるかというと、そうではない。残った残債は別にローンを組んで返していく。
その返済スケジュールも交えて金融機関の了承を得る。
住宅を購入する時に離婚になった場合も考えよう
こんなことは言いたくはないが、 家族みんなで幸せの象徴みたいな住宅購入だが、もしかしてを考えよう。
普段私は、不動産の所有権は共有状態にするものではないと言っています。
でも住宅を購入するにあたって、妻の独身時代の貯金をあてたとか、妻の実家の援助をあてた、妻も働いて返済していく等、明らかに妻側の財産の場合、妻の割合分はきちんと自分の分の所有を主張し、共有状態にした方がいい。
後々、夫の家だからと勝手に売られることもないし、財産分与も明確である。その家を買い取るにしても夫の分だけとなる。
相談内容には妻が頭金としてかなり用意したのに夫だけの所有権だという案件がよくあって、離婚時にそれもまたモメる原因にもなるのだ。
夫婦間であっても妻側の財産をあてておきながら夫だけの所有権にするのは贈与になることを知らない人が多すぎる。
離婚せず、老後配偶者が亡くなったならば、相続税を抑えることも出来るので夫婦間に関しては共有状態にしてもOKだと思っている。
不動産は大きな買い物である。
大きな買い物ゆえ、出口戦略を必ず考えて購入しよう。負動産にならないためにも。